VOL.77 獣医の日記
春から初夏にかけて、気温が上がり多くの生物が活発になってくると、日本の野生動物も出産・産卵、子育てを始めるものが多くなってきます。それに伴い、動物園に野生動物を持ち込みたいという相談が急増します。鳥の場合はまだ上手に飛べなくても巣を出て(いわゆる巣立ち)完全に自立するまで親が面倒を見る期間があるのですが、これを「飛べない鳥がいた、弱っているのかもしれない」と誘拐してしまう事例が本当に多いです。タヌキの赤ちゃんを親が草むらなどに隠しながら1頭ずつ引っ越しさせている最中に見つけて誘拐されることもしばしばあります。また「カラスや猛禽に襲われていた」と、襲っている方も野生動物で生きるために狩りをしていたのに、わざわざその邪魔をして襲われていた方の動物を連れてくる人もいます。 さらには、「近所にヘビがいた」「ハクビシンが歩いていた」との相談まで来ます。ここは人間だけの土地ではありません。野生生物が暮らしている土地に人間がお邪魔している場合も、人間が暮らす土地に野生生物が適応して生きている場合もあります。 今に始まったことではありませんが、動物ひいては自然と人間の距離感が危うくなっている、そもそも人間は自然の一部ではなかったか…と悶々と思案する季節です。










































